Home > 連載 > sH レポート『ジャクソン』当主初来日セミナー
sH レポート
業界向けの試飲会やイヴェントの模様、インポーターやメゾンの話題などを、シュワリスタ視点でレポートします
Vol.12
08.8.14 up

『ジャクソン』当主初来日セミナー

text: 前田行紀 photo: 前田行紀
取材協力: ヴァンパッシオン

7月15日(火)、青山にあるホテルフロラシオン青山「クレール」の間にて、株式会社ヴァンパッシオン主催による『ジャクソン当主 ジャン・エルヴェ・シケ氏来日セミナー』が開催されました。

【ジャクソン概要】
ジャクソン社は1798年にメミー・ジャクソンによって創業され、数々の逸話をもつメゾンです。かの有名なシャンパーニュ・メゾンクリュッグの初代当主ジョセフ・クリュッグがジャクソンで修行していたという歴史もあります。

またシャンパーニュの発展にも大きく貢献しており、 二代目アドルフ・ジャクソンは現在のシャンパーニュでは当たり前になっているミュズレとキャップシールを考案。その他にも※1糖分濃度測定器の発明などもおこなっています。剪定方法のギュイヨ式もDr.Guyotと共にアドルフが考案しました。

このような数々のエピソードをもつジャクソンですが常にシャンパーニュの先端を走っていたわけではありませんでした。二代目のアドルフが他界した1875年以降は苦難の時代もありました。しかし1974年、現在のオーナーであるシケ家が所有者となり再び注目を浴びるメゾンと成長しています。

数々の賞や専門誌で高い評価を受けるジャクソン。その当主のテイスティングセミナーとあって多数の方が参加。セミナーはヴァンパッシオンの代表取締役である川上氏の挨拶から始まり、その後シケ氏の畑に対する考えがスピーチされた後、新商品のテイスティングセミナーが開催されました。テイスティングはCuvee 731と今年発表のCuvee 732の比較試飲。その後には新ヴィンテージのGrand Cru Avize 2000(グラン・クリュ アヴィズ2000)、La Terres Rouges Rose 2003(レ・テール・ルージュ2003)、Jacquesson 1997(ジャクソン ヴィンテージ1997)、そしてこのセミナーの為だけに特別デゴルジュマンされたGrand Cru Avize 1990(グラン・クリュ アヴィズ1990)の試飲と続きました。

今回のセミナーで特に注目すべき発表は、2003年を境にジャクソンのシャンパーニュ造りが大きく生まれ変わるというものでした。現在のジャクソンはトップキュヴェ(デゴルジュマン・タルディフ) 、ミドルレンジキュヴェ(ヴィンテージなど)、スタンダードキュヴェ(Cuveeシリーズ)となっていますが、2003年以降は トップキュヴェ(デゴルジュマン・タルディフ)、ミドルクラス【単一畑シリーズDizy Corne Bautray(ディジー村 コルヌ・ボートレ) 、Ay Vauzelle Terme(アイ村 ボーゼル・テルヌ) 、Dizy Les Terres rouges(ディジー村 レ・テール・ルージュ)、Avize Chain Cain(アヴィズ村 シャン・カン)】、そしてスタンダードキュヴェ(Cuveeシリーズ)となります。

今までのヴィンテージを無くす理由は、ヴィンテージもCuveeシリーズもアッサンブラージュしていることには変わりなく。同様なコンセプトで造られたシャンパーニュは多数いらないという思想からきています。

実はこの変化には一つうれしい要素が含まれます。それは今までヴィンテージにブレンドされていたブドウがCuveeシリーズに回ってくることです。これによってCuveeシリーズは高品質のキュヴェがアッサンブラージュされることとなり、さらに複雑味を持ったシャンパーニュになることが予想されます。

しかし一方ミドルクラスのシャンパーニュはモノクリュのシャンパーニュとなり、ダイレクトに年ごとのブドウの出来不出来に左右されてしまうでしょう。モノクリュのシャンパーニュはディープ・シュワリスタには魅力ですが、シャンパーニュをセレクトするレストランのワイン担当者にとっては難しいシャンパーニュになるでしょう。

しかし、新しい試みを始めたジャクソンの変化をシュワリスタとしては歓迎します。実際に確かめられる日もすぐそこに来ています。シュワリスタの皆様は期待して待ちましょう。

Tasting Note

Champagne Cuvee #732

シャンパーニュ キュヴェ 732

ジャクソンを代表するNVキュヴェ。創業100周年を記念した1898年生産のワインを「キュヴェ1」として732番目に生産されたシャンパーニュ。2004年ヴィンテージを中心としたアッサンブラージュ(CH39%、PN25%、PM36%)で全体の50%を樽発酵・樽熟成。MLFを実施しドサージュは3.5g/L。毎年同じテイストを目指して作るメゾンとは違いこのCuveeシリーズはその年の特徴がうまく反映されています。2003年ベースのCuvee 731に比較してミネラル香がはっきり出ておりシャルドネの芯の強さを感じました。731との比較試飲で03と04年の差が実感できるでしょう。

Champagne Cuvee #731

シャンパーニュ キュヴェ 731

ベースとなるのは2003年ヴィンテージでCH52%、PN31%、PM36%。2003年といえばシャンパーニュファンはご存知だと思いますが、シャンパーニュ地方が猛暑にみまわれた年。その気候を反映したふくよかで熟成感のある味わい。しかしアタックにはシャルドネ由来のはっきりした力強い酸味やミネラル香が感じられます。NVといえども食事に十分あわせられるシャンパーニュです。

Grand Cru Avize 2000

グラン・クリュ アヴィズ2000

Avize村の自然農法の自社畑ラ・フォンス、シャン・カン、ネメリーの3区画のアッサンブラージュ(CH:100%)。この区画は南東向きで樹齢25年〜46年の古木のシャルドネのみから作られます。樽発酵・樽熟成、MLFを実施し、ドサージュは3.5g/L。熟した南国系のフルーツ、干した杏の香り、味わいも同様のテイストが口いっぱいに広がります。少し温度が上がるとクリーミーでまろやかなタッチが感じられます。しかしそこはBlanc de Blancsなだけあり、きりっとしたミネラル感とアフターに残るわずかな苦味が良いアクセントになっています。

Les Terres Rouge Rose 2003

レ・テール・ルージュ 2003

ディジー村の斜面下部にある自社畑から造られます。古木のPN(17%)とPM(83%)を使用。マセラシオン方式のロゼシャンパーニュ。2003年は猛暑となったため数時間のマセラシオンで濃い色調のシャンパーニュに仕上がっています。現在発売されているジャクソンロゼはきわめてブランのシャンパーニュに近い色合いでしたが、この新作は違います。まるでブルゴーニュワインのような明るいルビー色ので赤ワインと見間違うような鮮やかさ。口に含むと若干赤ワインのタンニンのような味わいが感じられます。

Grand Cru Avize 1990

グラン・クリュ・アヴィズ 1990

本セミナーのためにデゴルジュマンされた商品で参考商品。Avize2000同様3つの区画からのアッサンブラージュ。全体の30%を樽発酵・樽熟成。ドサージュなし。色調は黄金色で熟した果実の香りを最初に感じます。その他、木の皮の様な香りも感じられました。口に含むと非常に複雑味のある味わいが広がります。90年ヴィンテージの割にはフレッシュ感がありますが、これはデゴルジュマンが遅いことに由来しています。

 
sH

連載バックナンバー

連載の新着情報を知りたい方は今すぐ会員登録へ! 会員登録はこちら

VOTE

自宅のシャンパーニュは何本ぐらいある?