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sH レポート
業界向けの試飲会やイヴェントの模様、インポーターやメゾンの話題などを、シュワリスタ視点でレポートします
Vol.30
13.07.22 up

『アンリ・ショーヴェ』
生産者インタビュー

取材協力:(有)ヌーヴェルセレクション
(http://www.nouvellesselections.com/)
text:前田行紀
photo:sHwAlista 編集部

sH エクスクルーシヴ インタビュー

【アンリ・ショーヴェ概要】
シャンパーニュ地方でもピノ・ノワールの生産が盛んなモンターニュ・ド・ランス。その北側部から西側の丘陵部に位置する、リリー・ラ・モンターニュの地に8Haの畑を持つダミアン・ショーヴェ。
今回初来日となる彼の実力と人柄に迫ります。
アンリ・ショーヴェは個人で購入するお客様への販売が95%で、インポータを通じて輸出する量は全体の5%にすぎません。その輸出国も現在ではイギリス、カナダ、日本の3か国に限定されています。

今回ダミアンさんは初来日とうかがっていますが、まずはアンリ・ショーヴェのシャンパーニュ造りに対するフィロソフィーを教えていただけますか。

DC: まず私はレコルタン・マニピュランなのですべて自社畑でブドウを栽培してシャンパーニュを造っています。そのため、ブドウの品質に対しては強いこだわりを持っています。具体的には私たちはブドウを完熟させてから収穫することを行っています。通常シャンパーニュのブドウは糖度でいうと9.5〜10.5程度で収穫されるのですが、私は11を超えるまで熟してから収穫をするようにしています。これによって、シャンパーニュの味わいにふくよかさや奥行きが出ると考えています。

アンリ・ショーヴェはモンターニュ・ド・ランスの
リリー・ラ・モンターニュに位置していますが、この村の魅力とはなんでしょうか。

DC: 私たちはリリー・ラ・モンターニュに半分、サヴィニー・シュル・アルドルに半分の畑を所持しています。まずリリー・ラ・モンターニュはアイ村同様白亜質の土壌で、表土に石がごろごろ転がっていますから、ザ・シャンパーニュという土地柄だと思っています。
サヴィニー・シュル・アルドルに関しては岩石のような石灰岩の土壌で、畑仕事が大変なほど固い土壌です。いずれもピノ・ノワールの産地です。同じピノ・ノワールですがこのような土壌の違いがあります。
またリリー・ラ・モンターニュは人口1000人くらいの村でシャンパーニュの村の中では人口が多い方で、生産者は50人くらいいます。シャンパーニュ全体でも村あたりの販売量としても多い村に入ります。

モンターニュ・ド・ランスと言えばピノ系のブドウが有名ですが、アンリ・ショーヴェではブラン・ド・ブランもリリースされています。この界隈のシャルドネはどのような味わいの特徴がでるのでしょうか。

DC: 私たちのシャンパーニュに使用するシャルドネは2村のうちリリー・ラ・モンターニュで栽培しています。
コート・デ・ブランのシャルドネとの違いというと難しいのですが、一つ言えることはコート・デ・ブランは栽培のほぼ全てがシャルドネですが、リリー・ラ・モンターニュは約30%がシャルドネ栽培をしているという事実です。ピノ・ノワールの産地でピノ・ノワールが良いのはわかっていますが、土壌が白亜質ですのでシャルドネも良いと考えています。

そのため、最近ではいろんな生産者がシャルドネを増やしています。シャルドネに適した土壌を捉えて、シャルドネを植えるという作業をしていますので、コート・デ・ブランの全ての土地にシャルドネを植えられるという環境に比べて、強い思い入れで生産者たちも臨んでいるのではないかと考えます。

ちなみにピノ・ノワールについてですが、同じモンターニュ・ド・ランスでも、南側のアンボネイ村やアイ村などは南向き斜面が多いのに対して、リリー・ラ・モンターニュは北向きの斜面が多く、そのためブドウもこってりしたというよりは、繊細なピノ・ノワールに向いていると言えますね。

今年、新しいキュヴェを発売されるそうですが、どのようなものになるでしょうか?

DC: ブラン・ド・ブランで、なおかつ樽を使うというキュヴェです。そしてあえて透明瓶を使うという、私たちの中でもチャレンジングなことをおこなっています。シャンパーニュにとって「光」は大敵だと思っています。それは色を見せたいロゼだとしても透明瓶に入れないところで察していただけていると思います。そこを変えるという挑戦を含めて特別な存在となるでしょう。

初年度は1500本作って、日本には60本ほど出荷する予定です。年と共に少しずつ増やしていく予定で、2014年は2300本を生産する予定です。日本での発売は夏くらいを予定していますので、ご期待ください。

シャンパーニュの生産者として日本という市場をどう見ていますか?

DC: 私は今回初来日でしたが、想像していた以上にレコルタン・マニピュランが販売されていることに驚いたし、うれしくもありました。しかし大手のメゾンのスタンダードキュヴェと私たちのシャンパーニュが同じくらいの価格なのを見て、他国で大手メゾンのブランド力を感じました。自分の生産しているシャンパーニュに関して他国での価格を見られたことも非常に興味深い事でした。

最後に日本のシャンパーニュファンに一言いただけますか?

DC: 「シャンパーニュの泡で幸運をもたらす」という言い方があります。日本では未曾有の災害がありましたが、日本のみなさんはみんなで協力して驚くべき速さで立ち直られている。これはとても素晴らしいことです。こうした日本のシャンパーニュの愛好家に対して、少しでも僕のシャンパーニュが、幸福を運べればよいなと思っています。

Line Up

Brut Blanc de Noirs

ピノノワール90%、ピノムニエ10%のブラン・ド・ノワール。畑はモンターニュ・ド・ランス真北部のリリー・ラ・モンターニュに半分、西部の”小モンターニュ・ド・ランス”の主要村サヴィニー・シュル・アルドルに50%。平均樹齢25年。現在販売中のものは、2009年産が60%、2008年産が40%のブレンド。2年間以上瓶熟成。ドザージュは7g/l。

Brut Réserve

十八番のピノノワール60%に、シャルドネを40%ブレンドしたほとんどのキュヴェが単一品種で占める当生産者の中では異色のセパージュ。畑はリリー・ラ・モンターニュ100%。平均樹齢25年。現在販売中のものは、2008年産が80%、2007年産が20%のブレンド。ドザージュは7g/l。

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Brut Rosé

リリー・ラ・モンターニュ産のピノ・ノワール100%。樹齢約25年のぶどうは直接プレスして白ワインとなり、これが85%。残り15%分、樹齢40年以上のぶどうをセニエしたものをブレンドします。これはシャンパーニュにおける極めて伝統的なロゼの製法「マセラシオン・パルシエール」で、今日では非常に珍しいものです。ドザージュは10g/l。尚、ほとんどのロゼ・シャンパンは今日、色を見せるために透明なボトルを使用していますが、ショーヴェは「光に弱いのはどのワインも同じ」という理由から、通常の緑色ボトルを使用しています。

Brut Millésime Cuvée Noire

リリー・ラ・モンターニュの単一区画「マラドリエ」のピノ・ノワール100%。樹齢約25年。ドザージュは7g/l。年間生産量3000本の限定作品です。

Brut Millésime Cuvée Blanche

リリー・ラ・モンターニュの単一区画「グレーヴ」のシャルドネ100%。樹齢30〜35年のVV。ドザージュは7g/l。年間生産量7000本の限定作品です。

sH

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