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sH レポート
業界向けの試飲会やイヴェントの模様、インポーターやメゾンの話題などを、シュワリスタ視点でレポートします
Vol.4
07.11.30 up

『ドゥーツ』セミナー試飲会

text: 岩瀬大二 photo: 編集部 藤原
取材協力: ラ・ラングドシェン(株)

本格的な造り手として日本でもファンを拡大しつつあるドゥーツ社。その歴史は古く、1838年の創立という名門中の名門です。今回は、ニュー・ボトル・デザインのお披露目でCEOのファブリス・ロセ氏が来日。11月19日、グランドハイアット東京にてその発表会と、代表的なラインアップである5種類のシャンパーニュのセミナー試飲会が開催されました。

セミナーでは、まずロセ氏からドゥーツ社の歴史、哲学、そして今後のヴィジョンが語られ、中盤頃からは実際に参加者が試飲をしながら、各ボトルの味わいや香りを確かめ、ロセ氏のドゥーツへのこだわりに耳を傾けていました。会終了後は、シュワリスタ・ラウンジにお時間をいただきインタビューにもお答えいただきました。

以下、テイスティング・ノートです。

Tasting Note

ブリュット・クラシック N.V.

ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、シャルドネを1/3ずつ。ドゥーツ社のトレードマークともいえる定番モデル。今回試飲したもののリザーヴ・ワインは65ものテロワールから、04年を主体に02年と、03年。ちなみに03年は収穫が少なかった年、逆に04年はかなり多めに収穫された年とのこと。NVながらグラスから立ち上る香りは、熟成感と複雑さが圧倒的なパワーで迫ってくる。しかし飲み口は実に爽やか。舌にクリアな水と上質な砂糖を混ぜたような味がからみついたあとはスッとキレる。そのあと口の中にいつまでも熟した、しかしいやみのないフルーツのアロマがふんわりと残る。まさにピノ・ノワールの強い果実味と、シャルドネのフィネスの融合か。1時間ほどグラスにおいておくと、美しい水でトゥワイスアップにした上質のブレンデッド・ウィスキーの趣。最後まで楽しめるシャンパーニュ。ヘヴィーな煮込み料理、スパイスがキツメのものでなければほとんど料理は選ばなさそう。

ブリュット・ミレジム 2000

ピノ・ノワール60%、シャルドネ30%、ピノ・ムニエ10%。ロセ氏がインタヴューで語ったように、配分多めのピノ・ノワールは、力強さではなくエレガントな果実味。ブリュット・クラシックにあった複雑さが生むパワーではなく、複雑さが体にしみこむような優しさで表現されている。口に含むと、青リンゴやシトラスのような可憐でピュアなアロマと味。これを舌でゆっくりと解きほぐしていきたい気分に。そして解きほぐしていくと、奥から優雅で華やかな世界が広がってくる。少女から大人へ、などというと大げさかもしれないが、それぐらいスムーズに奥行きのある世界へと移行していく。魚料理との相性も良さそうだが、これだけで世界に浸っていただく…というのも推奨したい。

ブリュット・ロゼ N.V.

ピノ・ノワール100%。「アイ村にあるということで、ピノ・ノワールがクローズアップされますが、昔々のドゥーツは、ブラン・ド・ブランで名を馳せていました。いろんな畑を持っていて、いろいろな表現ができる。これはそのひとつです」とロセ氏がいうように、ピノ・ノワール100%ながら軽やかで、極論すれば乙女チックなほどの可憐さ。強烈な夜のお店の花束ではなく、草原で手渡す初めての花束という趣きか。チェリー、ブラックベリーにクランベリー、甘いイチゴと酸味のあるラズベリー。アロマはピュアなベリーのオンパレード。柔らかながら骨格のしっかりしたミレジムのロゼと比較するとあきらかにポップな印象。女性同士の軽やかなおしゃべりの午後と抜群の相性か。

キュヴェ・ウィリアム・ドゥーツ 1998

ピノ・ノワール55%、シャルドネ35%、ピノ・ムニエ10%。ドゥーツの正統的フラッグシップ。アロマとフィネスの融合を最高レベルで体現。最初のアロマは、お酒と卵をたっぷりからめた焼き菓子と強めのアシッド、さらにスパイスが一気に鼻を駆け抜け、ぐっと引き込まれる。その瞬間に軽快な季節フルーツのフルーツタルトや軽快なハーブが追いかけてきて渾然一体、さらに引き込まれる。口に含むとよい意味で強くもなく弱くもない印象。アロマの強さから感じるイメージからすると一瞬、おや、と思うがその隙を突く形で長い、長い余韻がやってくる。少しずつ複雑さがほどけ、じんわりと口の中から体に溶け込んでいくこの余韻は楽しい。メインに軽めの肉をオーダーするなら最高のマリアージュとなりそうだが、スパイスとの相性もあり、もしチャレンジの機会があればアジアン・エスニックでも面白そう。例えばヴェトナミーズ・フレンチや、上海のモダン・キュイジーヌ。

キュヴェ・ウィリアム・ドゥーツ ロゼ 1999

ピノ・ノワール75%、シャルドネ25%。多めに造った年でも1万2000本という非常に希少なシャンパーニュ。出会えれば幸せ。シャルドネは柔らかさ、優しさが特徴のアヴィーズから。格付100%グランクリュのみ使用。グラスでの香りも最初に喉を通り鼻に抜ける香りも、バラ色の世界。リラクゼーションにも良いかも? フィネスもキリリというよりは華やかさを感じる、たおやかででもどこか凛とした雰囲気。育ちの良い女性の初夏の軽やかなドレス姿。ピノ・ノワールの強烈さ、力強さは最初の印象ではないが、奥にいけばやはり力強い果実味を感じられる。余韻ははかなげながらも実に長く続く。リゾートのシーフードグリルレストランのディナー、クリスマスのメインの子羊ローストなど、ロマンティックな特別なシチュエーションに最高の1本。

アムール・ド・ドゥーツ 1999

シャルドネ100%。メスニル・シュル・オジェール村から60%、アヴィーズ村から35%、ヴィレール・マルメリー村から5%。ミネラル&アシッド、やわらかさなどを各村のテロワールの特徴からピックアップし融合。舌に残るかわいらしい甘み。甘口ではないし、喉ごしもブリュットのそれながら、最初の印象は無邪気な天使たちのお菓子パーティーという世界。明るく快活、でも舌にとろけ、口の中で溶け合う瞬間は、せつなさを感じるほど、はかなげで、心に沁みてくる。もちろんいろいろな天使がいて(笑)、気がつくと心地よい苦味もちらほら。アフターはそのままケーキ!おどろくほどのスイートなアロマ。しかしやはり飲めばクリアな後味と楽しい余韻。熟成感が充分だからこその快活さ。やはりドゥーツのシャンパーニュは真面目だからこその面白みがある。

sH エクスクルーシヴ インタビュー

ルイ・ロデレール社からドゥーツ社のCEOに就任。家族経営の良さと、モダンな経営思想を融合して、ドゥーツの新しい時代を築いている、ファブリス・ロセ氏(以下FR)。ルイ・ロデレール クリスタルとアムール・ド・ドゥーツ、世界中のセレブリティを虜にした2つのシャンパーニュを世に送り出した氏に、ニュー・ボトル・デザインへの想い、日本マーケットの動向、さらにブリュット・クラシックの魅力などについてお伺いしました。

5ヶ月ぶりの再会です。前回は特集の取材にご協力いただきましてありがとうございました。(特集 Vol.9『ドゥーツで晩餐 名門メゾンの多彩なラインアップを楽しむ夜』

FR: そうですね! 素敵な晩餐でした。

今回は新しいデザインのお披露目での来日ですが、それにしても特徴的なニュー・ボトル。

FR: 斬新ではなく、バック・トゥ・ベーシック。19世紀のボトル・デザインに近づけました。大きなメゾンのように特に派手なキャンペーンを打つわけではなく、徐々に全てのラインをこのデザインにしていきますので、お気づきいただければうれしいですね。

このタイミングでデザインを変えられた理由は? コストを吸収するのも大変そうですが(笑)。

FR: 価格には反映しませんからご安心を(笑)。なによりの理由は、我々ドゥーツが最初から最後まで、自分たちの手でシャンパーニュ造りをしている。最後に瓶詰めをしてエチケットを貼って終わり、というようなやり方ではないことを示したかった、ということです。

マーケティングからの発想ではなく、ドゥーツのスピリットの表現なんですね。それにしてもこのボトルにしてもそうですが、ドゥーツのシャンパーニュ造りはとても贅沢だと感じます。自社畑の保有、一番絞りしか使わない、3kmの長さ、65mの深さを持つスケールの大きなセラーに700万本の在庫…。

FR: ええ。コスト的には結構大変です(笑)。しかし、NVのブリュット・クラシックで通常の15ヶ月を超える3年熟成をさせたり、たくさんのリザーヴ・ワインを保管しておくことを考えると、これは仕方のないことだと思います。年間170〜180万本を出荷しますから、そうなるとセラーにはこれぐらいの在庫は必要ですから。それよりも、最近はぶどうの値段があがっているのが、ちょっと頭の痛い問題です。

話は変わりまして、今日のレクチャーで、日本での出荷量が大幅に増えているとおっしゃいました。取引の現状はいかがですか?

FR: 現在、日本との取引は、ドゥーツの中では世界の中で7番目か8番目というところですが、ますます重要性が高まっています。特に、キュヴェ・ウィリアム・ドゥーツやアムール・ド・ドゥーツといったプレスティージュクラスが伸びています。これもホテルや飲食店に強い、ラ・ラングドシェン(株)との代理店契約の成果でしょう。本当によくがんばっていただいています。

では、今度は主力のNV、ブリュット・クラシックをプッシュするフェーズですね。先日、伊勢丹さんのノエル ア ラ モードのプレイヴェントで行われた和食の会食会ではブリュット・クラシックがウェルカム・シャンパーニュとして振舞われていました。寒いところから入ってきて最初にこれをいただく。季節的にもあっていたし、なんともいい意味で贅沢だなあ、と感じました。

FR: それは素晴らしい! ブリュット・クラシックは和食にも合いますから。なによりもブリュット・クラシックは我々が一番大切にするシャンパーニュです。フランスの著名な雑誌などでも世界のトップ6に数えられました。もちろん、他にも素晴らしいNVシャンパーニュはたくさんありますので、我々のものが全ての愛好家の方にとってベストというわけではないと思います。それでも、通の方にも、そうでない方にも、楽しんでいただけるものだと確信しています。

シャルドネがもたらすフィネス、凝縮されたピノ・ノワールの果実味、そしてムニエのしなやかさ。これらが複雑にバランスをとりながらも、「化粧をしていない」ナチュラルな美しさがある。なによりもとても真面目に造られています。三ツ星レストランでも楽しんでいただけますが、お家で買って飲んでいただいても楽しいシャンパーニュですよ!

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