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sH レポート
業界向けの試飲会やイヴェントの模様、インポーターやメゾンの話題などを、シュワリスタ視点でレポートします
Vol.6
08.2.19 up

『フランソワーズ・ベデル』
当主インタビュー

text: 前田行紀 / 岩瀬大二 photo: norico
取材協力: ヌーヴェル・セレクション / シャンパン・カフェ『アルベンテ』

sH エクスクルーシヴ インタビュー

フランス最有力のビオディナミグループのメンバーとしても注目されている『フランソワーズ・ベデル』。地球全体を生命として捉えた「あらゆる生命体を癒すためのワイン造り」を実践。マーケティング用語としての「自然派」ではなく、まさに求道者"の名にふさわしいRMです。その当主である、フランソワーズ・ベデル氏(以下 F)とそのご子息であり、世代交代のバトンを引き継ぐべく加わったヴァンサン・デゾヴォー氏(以下 V)が来日。ビオの実践というだけではなく、実にうまい、高品位シャンパーニュとしても評価の高いフランソワーズ・ベデルをとりまくさまざまなお話を、シュワリスタ視点でおうかがいしました。

2年ぶりの来日。その間、日本のシャンパーニュの輸入量は伸び、世界3位になりました。実感としてはいかがですか?

V: 確かにそうですね。とはいえグランメゾンの伸びということで、かならずしもRMが伸びているということではないと思います。それでもRMの種類も増えていますし選択肢は確実に増えているように思いますね。

そのRMの中でも、フランソワーズ・ベデルは非常にユニークな造り手であると思います。まず、良く知られているように、ビオの黎明期から取り組んでいること。次に、テロワールのこと。そして、母子で取り組んでいること。まず、1990年ごろと、黎明期からビオに踏み込んだ理由からお伺いしたいのですが。

F: 27年前に息子(ヴァンサン・デゾヴォー氏)を出産したとき、彼の健康にとても問題があったのです。いろいろな西洋医療も試したのですが、うまくいかなくて…。10歳ぐらいまで、その闘いでした。それが化学物質と正反対のホメオパシー(同種医療)と出会い、健康になって。それが自然なものに全てを変えるきっかけでした。生き物などすべてを見る目もかわったのです。

今や、マーケットの発想からビオを謳うような傾向もある中で、とてもパーソナルな理由から始まった。それが強いビオへの信念に繋がっているんですね。

F: ええ。その後、シャンパーニュにおけるビオのパイオニアである、ジャン・ピエール・フルーリー氏や、フランソワ・ブシェ氏に教えを請いました。研究を重ねて、そして1998年からビオ栽培を開始しています。ブシェさんたちとの出会い、指導がなければ今のベデルはなかったですね。

そしてヴァンサンさんの存在なくしては生まれなかった。ヴァンサンさんは2003年に研修を終え、母君とともに取り組まれています。共にプロフェッショナルとしてのプライドもあってアッサンブラージュでぶつかりあったりとか…

V: (笑)そうですね。議論はとても真剣にやっています。だからこそ、より新しい、より優れたアイデアが生まれます。最後は合意して、結果、いいものになりますね。まあ、なんでも言い合える関係ですから。

F: 女性の味覚・視点と男性の味覚・視点、その2つから検討でき、うまくあわさっているかしらね(笑)

続いてユニークなのはクルット・シュル・マルヌ村という「場所」です。ちょっと観光案内を(笑)

F: ランスからの距離とパリからの距離が一緒。シャンパーニュでは最も西に位置するんですよ。ランスよりも、パリジャンのニュアンスですね。

V: ユーロ・ディズニーから40分。でも人口500人しかいませんし、観光案内といっても難しいかも(笑)。森の中にある小さなかわいらしい、きれいな町ですよ。古代遺跡、昔の人が住んでいた洞窟はありますけど…

F: レストランはない(笑)

実はクルット・シュル・マルヌ村はネゴシアンによるぶどうの買取り価格が低いのです。それから主役となりにくいピノ・ムニエが主。ハンデというわけではありませんが、その中で、これだけ品質のいい、おいしいシャンパーニュを造られているのは見事。定番のディ、"ヴァン・スクレ"ではピノ・ムニエの素晴らしさを再認識させられました。

F: もともと継承した畑がピノ・ムニエでしたからね。この土地のものですから。そういっていただけるなら、なおさらピノ・ムニエでおいしいものを造れるようにがんばります(笑)。ピノ・ムニエもとても良い個性を持ったぶどうなんですよ。

映画のような小さな村で、丹精こめて作られた、品質のいいシャンパーニュを、ここ日本でいただけることを幸せに思います。最後に日本のファンにメッセージを。

F: まず、私たちのシャンパーニュの品質に対して信頼をいただいてありがとうございます。

V: そして、私たちのシャンパーニュを飲んで幸運になっていただければ。私たちも生命のエネルギーをこのシャンパーニュに込めていますので、その生命力、エネルギーを感じていただきたいですね。

それからお母さんの愛ですね。

F: ええ、もちろん(微笑)

ビオを実践し続けるのは苦労の多いことかと思いますが…

F: 私はこの職業に誇りを持っています。プロ意識。それも好きでなければできませんから、やっぱり好きなんでしょうね(微笑)

Lineup

「毎年、試飲しながらアッサンブラージュしながら決めていくので、まだラインアップは確定していません。年によって、とんでもないものがでてくればラインアップを追加したりするかもしれませんし。ただこの4つにだいたい落ち着いてきました」(両氏の解説より)

Dis, "Vin Secret" Brut

ディ、"ヴァン・スクレ"

1999年から誕生したベデルのスタンダード・キュヴェ。キュヴェ名は「ワインよ、あなたの秘密を教えておくれ」というロマンティックなもの。ピノ・ムニエ96%、シャルドネ4%と、ベデルの真骨頂、ピノ・ムニエがメイン。アッサンブラージュは毎年変わる。現在リリースされているものは1999年産が99%で、1998年産を1%程度ブレンド。ドザージュは9.15g/l。熟成期間は5〜6年。果実の力強さとまろやかさが持ち味。

Entre Ciel et Terre

アントル・シエル・エ・テール

Dis, "Vin Secret"と比べて、古樹の多い最良区画のぶどうをより多く使用し、プレス時の一番絞り果汁の比率を高めた。ピノ・ムニエ72%、ピノ・ノワール14%、シャルドネ14%、平均樹齢30〜60年のピノ・ムニエを使用。ラベルにはミレジム表記はないが、実際は1999年産ほぼ100%。ドザージュは6.95g/lとかなり少なめ。5年間以上瓶熟成。名前は「大地と空の間に」の意。

l'Ame de la Terre 1998

ラム・ド・ラ・テール 1998

「大地の魂」の意味。2008年3月日本発売開始予定のニューラインアップで、限定生産4500本。たまたま98はシャルドネ41%、ピノ・ノワール35%、ピノ・ムニエ24%のブレンド。ミレジメの特徴を前面に出すことに主眼を置く。「その年の個性を出していきたいので、ピノ・ムニエ100%の年がある可能性もありますよ」(フランソワーズ氏)。ドメーヌ・ルフレーヴの3〜5回使用樽で発酵。98年はベデルが本格的にビオに移行した年。その想いを味わう絶好のプレスティージュ。

Comme Autrefois 1997

コム・オートルフォワ 1997

ビン熟成時に王冠ではなく、コルクを使用。古樽発酵とコルク熟成が昔のシャンパーニュでよく行われていたことが「昔のように」というキュヴェ名の由来。ピノ・ムニエ78%、シャルドネ13%、ピノ・ノワール9%。アルコール発酵もマロラティック発酵も100%古樽発酵・熟成。2000本のみのリリースというベデル最上級キュヴェ。2008年春より1998ミレジメを発売開始予定。

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