Home > 連載 > 前田エクストラ・ブリュット「シャンパーニュが品不足!?」
前田エクストラ・ブリュット
シャンパーニュを取り巻く話題をちょっと? かなり? 辛口で切り取ります
前田行紀
シュワリスタ・ラウンジではシャンパーニュ・アーカイヴのデータ作成を担当。豊富な知識と旺盛な探究心で、「シャンパーニュの求道者」の異名を持つディープ・シュワリスタ。このコラムでは泡業界を愛と俯瞰、両面で斬っていく。
Vol.11
シャンパーニュが品不足!?
07.11.15 up
残暑厳しい季節が過ぎて、あっという間に冬支度。
まるで秋を飛ばして突然冬が来たようですね。

先日CIVC(シャンパーニュ委員会)主催のシャンパーニュの多彩な個性を楽しむ会に参加をいたしました。
そこで言われていたのが今、空前のシャンパーニュブームであること、そして生産量が飛躍的に伸びていることなどをCIVCの代表者より発表がありました。そしてこのシャンパーニュの人気はどこから来るものなのかも。

さて、今回のエクストラブリュットはシャンパーニュの生産にまつわるお話です。
シャンパーニュの販売量が年々世界的に増加していることは、CIVCのお話や、各メディアのワインニュースなどで発表されています。シャンパーニュ愛好家にとっては嬉しい話ですが、実は手放しに喜べないところもあります。

なぜなら、シャンパーニュは法律により厳しい収穫量の制限や熟成期間、フランスのAOC法によって栽培地域が限定されています(現在シャンパーニュの生産が許されている地域は約35000haです)。
このように熟成期間がかかり、かつ栽培地域が限定されているため、急激に需要が増えたとしても生産本数を増加させることは容易ではありません。

近年ワイン輸入の伸び率が著しい国は中国やロシアだそうです。つまり、このまま中国やロシアのシャンパーニュ需要が伸び続ければ、近い将来シャンパーニュ不足や供給不足によるシャンパーニュの高騰を招きかねません。現在でも数年前と比較してシャンパーニュの価格は確実に上がってきていますが、更に高騰すればシャンパーニュを飲むことが高嶺の花となってしまいます。
現在、このシャンパーニュ需要増加に対するCIVCの対策として、収量の緩和や栽培地域拡大の検討も行われていますが、すぐには実現しないでしょう。

栽培地域の拡大も、新たな土地へのブドウの作付けや、土地にあったブドウを栽培するなど数年がかりの作業ですし、需要の増加によってシャンパーニュ地方の規制が緩まることを良いことに、安易に売る為のシャンパーニュを作る、心無い造り手が出ないとも限りません。シャンパーニュ不足に陥るのは1年や2年という至近の話ではありませんが、一部の粗悪な業者に踊らされないよう私たち消費者もシャンパーニュや、良質な生産者を見る目を養っていかなければなりませんね。

余談ですが、シャンパーニュの地域拡大、もしくは変更に私は賛成です。というのも近年、地球の温暖化によりシャンパーニュ地方が北限だったブドウ栽培可能地域も北へ上がってきているようです。冷害などの被害も年々減る傾向にあります。このようなグローバルな視点から見ても栽培地域の見直しが必要な時期に来ているのかもしれません。

それでは今宵も良い泡を

※シャンパーニュ需要が伸びている中国ですが。現在はまだ日本の輸入量の1/10以下です
SH

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