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前田エクストラ・ブリュット
シャンパーニュを取り巻く話題をちょっと? かなり? 辛口で切り取ります
前田行紀
シュワリスタ・ラウンジではシャンパーニュ・アーカイヴのデータ作成を担当。豊富な知識と旺盛な探究心で、「シャンパーニュの求道者」の異名を持つディープ・シュワリスタ。このコラムでは泡業界を愛と俯瞰、両面で斬っていく。
Vol.12
シャンパーニュのトレンド
07.12.13 up

街の中のイルミネーションもクリスマス色に変わりつつあります。
この時期はシャンパーニュの需要も急増し、いたるところで販売されるようにもなります。
なかなかシャンパーニュを飲む機会の無い方も是非この季節に楽しんでみてはいかがでしょうか。

例えば、クリスマス時期には欠かせないケーキとであれば甘口のシャンパーニュなどの相性がよいでしょう。この甘口シャンパーニュ、ここ近年のシャンパーニュブームで一般の酒販店でも見かけるようになりましたが、やはりまだまだBrut(辛口)が大半を占めています。しかし、シャンパーニュが世に出て間もない頃は、むしろ甘口が主流だったのです。その当時は宮廷の貴族達が晩餐会などの食後酒としてたしなむお酒でした。この流れを変えたのは、Pommery社。1800年代後半に辛口のお酒が好きなイギリス人向けに辛口のシャンパーニュを販売したのが辛口人気のはじまりだと言われています。近年では、多くのメゾンからNon Dosageと言われる一切Dosage(*1)をしないシャンパーニュも発売され、いっそう辛口の傾向が強まっています。

さて甘口、辛口とは別にもう一つ面白い傾向があります。それはNV(*2)のプレスティージュ・シャンパーニュが増えていることです。今までであれば一部の例外(Krug Grand Cuvee, Laurent Perrier Grand Siecle等)を除いてプレスティージュ・シャンパーニュにはヴィンテージが表記されていました。一般的にはNVより、ヴィンテージのほうがランク上というイメージもありましたので、ヴィンテージ・イヤーが記されていることで、単純にシャンパーニュのランクを判断している面もありました。しかしNVのプレスティージュが出回ることでこのセオリーが崩れてきています。

シャンパーニュは本来アッサンブラージュ(*3)して造る飲み物なので、この流れは自然なことのように思われます。ただワインのように造り手とヴィンテージによって一般消費者がおおまかな価格を判断できなくなるという側面ももっています。正しい、正しくないということではなく、一般的な物差しがあまり通用しなくなってきた、ということがいえるかもしれません。

プレスティージュ・シャンパーニュの購入が多くなるこの季節。NVよりもヴィンテージが上、シャンパーニュは辛口に限る! というような、あまり単純なイメージや情報に左右されずに、今日はヴィンテージの気分、このメゾンのプレステージュ・ノンヴィンテージなら贈り物にもぴったり、など、ご自身の気分にあったシャンパーニュ選びをしてみてください。

それでは今宵も良い泡を

SH

*1 Dosage(読:ドサージュ)=出荷前に澱抜き後に糖分を加えること、この量によって辛さが決定する

*2 NV=ノン・ヴィンテージの略、ノン・ミレジメ(Non millesime)とも言う

*3 アッサンブラージュ=色々なぶどうの品種を混ぜ合わせること

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