シャンパーニュを楽しむWEBマガジン [シュワリスタ・ラウンジ]

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幕開けはマム グラン コルドンから。
【シェフコラボレーションイベント】フォーハンズディナー~Le dîner à 4 mains~開催

2011年の日本初開催から今年で13回目の開催を迎えた『ダイナーズクラブ フランスレストランウィーク』。2023年も9月22日~10月15日まで24日間にわたって全国約500のフレンチレストランで開催。シャンパーニュ愛好家において心待ちにし、ペアリングを楽しまれ方も多いことだろう。そのキックオフ的なイベントとして、9月14日、銀座Opusesにて、『【シェフコラボレーションイベント】フォーハンズディナー(&ランチ) ~Le dîner à 4 mains~』が開催された。4年ぶりに海外よりシェフを招聘するダイニングセッションというお祝いムードの中、東京とパリの2名のシェフ、4つの手「mains(マ)」により生まれる、異なるアイデンティティを表現しながら「和食材のテロワール」と「フランス料理」の融合と絆の構築を目指したという特別コースを堪能した。このお祝いムードと、料理の期待を高めるべく登場したシャンパーニュが『マム グラン コルドン』だった。

その登場シーンの前に、今回の“フォーハンズ”を担った2人のシェフを紹介しよう。パリから来日したのは、ファニー・エルパンさん(下画像中央)。アラン・デュカスのもとでインターンシップを経験し、パリ、ニューヨーク、ロンドンなどざまざまな地域のレストランでキャリアを築いてきたという。その後、アラン・デュカスよりパリのレストラン「Allard(アラール)」のシェフに任命され、現在は、「Le camondo(ル・カモンド)」のシェフとして15人の料理人を率いている。今回はその中の一人、スーシェフのメディ・ブセナシェフさん(下画像左))ともに初来日。日本側は、会場となった銀座Opusesの十楚(じゅうそ)武志シェフ(下画像右)。料理人歴は22年。三井ガーデンホテル銀座内レストラン sky 、西鉄ソラリアホテル内レストラン Fututoshi で料理長、複数店の統括料理責任者を歴任後、銀座Opuses料理長に就任した。自身を「食感マニア(笑)」と語るが、今回のコースではその言葉通り、さまざまなテクスチャーの組み合わせを楽しむことができた。

SHW_Report_231002さて、コースの幕開けは、やはりシャンパーニュ。今回テーブルを飾ったのは、『マム グラン コルドン』。十楚シェフは「やはりはじまりはシャンパーニュでありたい。(というよりも)シャンパーニュでなければ、という思いがあります」と語り、ファニーシェフも「コースの最初がマムと聞いて気分が上がりました。目の前にあったので一気に飲んでしまいました」と笑う。シェフの気持ちがマムの存在でぐっとあがったのなら、料理も楽しいものになる。

SHW_Report_231003ペアリングは、ファニーシェフが手掛けた、「マスのヴェルジュ / ブドウ / 濃厚ブイヨン」。滋賀県琵琶湖でとれた新鮮な琵琶マスをブドウでマリネ。ブドウの果肉をマスタードを和えたソースを下に添え、マスの濃厚なブイヨンを掛け提供された。関西出身の十楚シェフにとって琵琶湖のマスは「ぜひ知って欲しかった」食材。これをファニーシェフの創作によって、2人のコラボレーションが生まれた。(ペアリングの感想)

SHW_Report_231004その後、2つ目のアミューズとして十楚シェフの『海と山をテーマにした2種類のスープとスナック』に、プロヴァンスの王道ロゼといった色合いと風味の『セント マルガリート ファンタスティック ロゼ 2022』、続いて、ブルターニュ産アーティチョークをまるごとオーブンで焼き、ヴィネグレットソースで味付け。白味噌を使って日本風のタッチを加えたというファニーシェフの「アーティチョークヴィネグレット / ヘーゼルナッツ / 味噌」(下画像1枚目)と、十楚シェフの「鰻(ウナギ)発酵パイナップル コンテ」(下画像2枚目)には、『ブラン ド シャス スプリーン 2019 ブラン ド ボルドー』。もちろんそのペアリングも狙いはあるし、まだ暑さの残る東京で味わう可憐でドライな『セント マルガリート ファンタスティック ロゼ 2022』も良きタイミング。という中でも、シュワリスタ的にはせっかくの機会、オープニングを飾った『マム グラン コルドン』も合わせてみた。フレッシュな状態で飲んだ記憶と、今、目の前にあるグラスに残したマム、オープニングで抜栓してから時間が経過し少し落ち着きはじめたマムという3つを頭と舌で感じながらのペアリングも楽しいもの。ファニーシェフのヴィネグレットと白味噌が一体となったまろやかで旨味のある酸と、グラスの中で変化したマムの、落ち着きはじめたけれどパワーを感じる酸は見事に手を取り合い、鰻とともに、十楚シェフのイチオシという石川県の生産者、高農園のナスのなんともやわらぎのある食感と、軽快で小気味よく、しかし時間の経過とともにやわらいでいくマムのテクスチャーが絶妙に交じり合う。シャープに感じられる酸味と重厚な風味のボルドー白も良いが、「食感マニア」という十楚シェフには、テクスチャーのマリアージュという点で、ぜひなにかの機会に試していただきたい。

SHW_Report_231005SHW_Report_231006ファニーシェフの創作意欲と技が良く表現された「モダンポトフ」には『シャトー シャス スプリーン 2008 ムーリ』。モダンポトフの色合いや、大根、人参、ほうれん草、牛テールといった素材からは白ワインを想像するが、意外にも濃厚で、全体の調和を図るジャガイモのムースも、赤ワインでコク深く楽しむことができた。この滋味深さと旨味に、少し時間を置き温度がややあがってきたマムをあわせると、これもまたテクスチャー、風味共に相性がいい。用意されたペアリングと同時にシャンパーニュも定点観測的というか、変化を楽しみながら合わせていくのも面白い体験だ。贅沢な想像だが、十楚シェフの「鰻(ウナギ)発酵パイナップル コンテ」にマム グラン コルドンのマグナム、『海と山をテーマにした2種類のスープとスナック』に『マム グラン コルドン ロゼ』、ファニーシェフの「アーティチョークヴィネグレット / ヘーゼルナッツ / 味噌」にはピノ・ノワールの深みと奥底からの力を感じさせるミレジメ、シンプルな素材ながら複雑さが楽しい「モダンポトフ」には『メゾン マム RSRV 4.5』とも合わせてみたい。

和食材とフレンチ食材、フランスと日本の才能。こうした組み合わせに、シャンパーニュは合うということはすでに織り込み済みではあるけれど、改めて「ここにシャンパーニュがあれば幸せ」ということを実感した機会だった。

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Text: daiji iwase

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