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RUNNING STORY AT CHAMPAGNE 聖地を巡る
華やかさの理由と真髄を探るべく、シュワリスタ、シャンパーニュ地方へ
岩瀬大二(d's arena)
バブル入社組。酒と女と旅を愛する編集プロダクション代表。世界最高峰の世界遺産はイタリア女だ! とローマのど真ん中で叫んだ経験あり。企業SP、WEBサイト、携帯メディアなどでエディター、プランナー、ライターとして活動中。
photo: NORICO
Vol.6
守り続けるために、広げていくために
09.1.23 up

『シャンパーニュ』。 この名称は、常に模倣の危機に晒され続けてきた。

知識ばかりで頭がガチガチになってしまっては、お酒は楽しくない。むしろ邪魔になるだけだと僕は思っている。だからライト・シュワリスタの方々へのメッセージとすれば、「シャンパーニュの教科書」があるならば、それは、飲んで、楽しんでからページをめくっていただければ良いのではないか、と思う。しかし、抑えておくべき程よい知識や情報は、さらにその世界を広げ、もっと面白くしてくれることも同時にお伝えしたい。例えば、シャンパーニュとは何か? ということ。「シャンパン・ファイトが行われています!」その様子を見ると…カリフォルニアのスパークリング・ワイン。こんな出来事にも、実は持つべき基本的な情報が隠されている。

誤解から生まれること。これはいい。それはまだその方に正しい知識や情報が伝わっていないのだから、その機会が増えればいいだけのこと。やっかいなのは、悪意と利益から生まれること。シャンパーニュという存在、名称の上っ面をなめて利用しようとする者たちが間違いなく世界にはいる。もちろんシャンパーニュが輝かしく、甘美で、上質で稀有な存在だからこそ利用されるのだろう。煌めきの泡立ちというイメージで石鹸やシャンプーの宣伝文句に使われることもあるだろうし、粗悪な清涼飲料水に冠されることもある。そういう手合いには理解をさせるというよりも、強固な姿勢を見せる必要もあるだろう。とはいえ、世界各地で行われることまで造り手たちが目を光らせるわけにもいかない。

今回の巡礼を見守ってくださったプレス担当のフィリップ・ウィブロット氏。C.I.V.Cの世界的な活動についてレクチャーいただいた。

そこでフランス国内はもとより、世界中でシャンパーニュを守り、広げていく活動をしているのが『Comite Interprofessionnel Du Vin De Champagne』(シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会)、C.I.V.C.だ。エペルネに本部を置き、日本など世界に事務局を設置しているこの委員会に、シャンパーニュ滞在中大変にお世話になった。それは我々が想像していたよりもはるかに手厚く、そして熱心なものだった。サロン/ドゥラモット、パイパー・エドシック、ルイ・ロデレールへの訪問をアレンジしていただき、またランチ、ディナーを通じて食とシャンパーニュ、シャンパーニュの文化を体感させていただいた。我々が自由に動き回る日は、それはそれで意義深い体験だったが、C.I.V.C.の方々と過ごした時間は、身が引き締まり、シャンパーニュに対して真剣に向き合う素晴らしいものだった。

C.I.V.C本部での教育的ディギュスタシオン。学術的、地政学的なアプローチが新鮮だった。

特にプレス担当のフィリップ・ウィブロットさんの熱心なガイドに、強い感銘を受けた。度重なる予定変更にも辛抱いただき、最初のランチとなったランスの星付きレストランでの会食、シャンパーニュの豊かな文化についての熱弁に引き込まれた。鴨のタルタルとポメリーの組み合わせ。日本でももちろんこの組み合わせを楽しむチャンスはあるだろう。でも、やはりこの地で、このレストランで味わうマリアージュと、フィリップさんの情熱的な、しかし物静かなトーンでの言葉のひとつひとつが身体に染みた。デセールと甘口シャンパーニュの組み合わせは、どの会食でも必ずアレンジされた。これも、C.I.V.C.ならではの豊かな提案だとうならされた。

シャンパーニュでの滞在最終日には、エペルネの本部に訪問させていただいた。そこで再びフィリップさんから、C.I.V.C.のミッションについてレクチャー受け、さらに、C.I.V.C.のワイン研究員であるヴィオレーヌ・プリヴェさんから、教育的ディギュスタシオンの時間をいただいた。シャンパーニュのテロワールを解説いただき、あわせて3種類の特徴あるシャンパーニュをテイスティングしながらの意見交換。一方的なレクチャーではないところに懐の深さを感じた。さらに昼食は、レストランにて広報ディレクターのダニエル・ロルソンさんと。家族がパリで日系の金融機関に働かれていることや、日本でのシュバリエ授賞式に来日されるなど知日派ということで、日本におけるシャンパーニュ文化の広がりについても、楽しく会話させていただいた。

「あなたがたは気持ちよく、おいしくシャンパーニュを飲んでくれるね。それじゃあ…」

と微笑みながら、レストランとっておきのロゼ、さらにはシャンパーニュ地方独特の非発泡ワインである「コトー・シャンプノワ」を開けてくださった。なんとも幸せな時間…。

ディギュスタシオンを担当されたC.I.V.C.のワイン研究員、ヴィオレーヌ・プリヴェさん。

シャンパーニュはやはり素晴らしい。それは他の地域のスパークリング・ワインと比べての優劣で語っているわけではない。正直にいえば、またシュワリスタ・ラウンジ編集長という立場を考えずに言うなら、お気に入りのスパークリング・ワインはいくらでもある。デイリーでわいわいとやるなら南オーストラリアにとても楽しいスパークリング・ワインがある。独特な乾き具合とでもいうのだろうか…スペインのカヴァに美しい太陽を思い浮かべることもある。最近はドイツのイメージを一新してくれた辛口の見事なスパークリング・ワインにも出会った。日本でも、シャンパーニュ方式ではない「日本食」にあうスパークリング・ワインの造り手にお会いする機会もあった。ではなぜ、その中にあって、シャンパーニュは素晴らしいのか。きっと、僕と仲間たちは、それを伝えていく一端を、この滞在で、勝手にかもしれないけれど担うことになったのだろう。シュワリスタ・ラウンジの記事、そして活動全てが、その答えを紐解き、伝えていく作業。

だけれども、だからこそ。シャンパーニュは僕らの期待に応え続けなければいけない。僕らは担い手を勝手に自認するけれど、その前に僕らは、ただただシャンパーニュを愛し、期待するシャンパーニュ好きな人間たちなのだ。もっと喜ばせてほしい、感動させてほしい。その体験が、僕らもシャンパーニュが世界中で愛されるためにお手伝いをする動機になるのだから。

教育的…といっても一方的なものではなく、活発な意見交換も。素直な意見をぶつけさせていただいた。

11月、新宿。優秀なオートクチュール・シャンパーニュの造り手であり、この連載にも登場した『ローズ・ド・ジャンヌ』の若き当主、セドリック・ブシャールと、イタリアン・レストランで食事を共にした。もちろんワインのオーダーは緊張する。ロンバルディア州の白、カンパーニャ州のアリアニコ100%の赤ワインを楽しそうに、興味深そうに確かめるセドリック。最初の乾杯はシチリアのスプマンテだった。セドリックは言った。

「こういうのを飲むと、シャンパーニュの造り手ももっと努力しなきゃって思うよ。シャンパーニュって名前だけで高く売れるとか…考えていてはいけないと思う」

彼のような造り手がいるからこそ、そしてその努力を受けて活動する人たちがいるからこそ、シャンパーニュは守られていく。そして僕たちは、そんな造り手の姿と、彼らが生み出す感動のシャンパーニュに触れて、一緒に守っていこうと思うのだ。

ブラン・ド・ブラン、3種のセパージュ、そして甘口という3種類で、それぞれの個性をじっくり考えながらの1時間。

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