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sH レポート
業界向けの試飲会やイヴェントの模様、インポーターやメゾンの話題などを、シュワリスタ視点でレポートします
Vol.15
09.2.20 up

『ゴセ・ブラバン』
生産者インタビュー

text: 前田行紀 photo: 編集部 五十嵐
取材協力: 豊通食料 ワイン本部

sH エクスクルーシヴ インタビュー

【ゴセ・ブラバン概要】
1584年、ピエール・ゴセがアイ村を拠点として以来、4世紀以上にわたって続く歴史ある家系。 2代前のガブリエル・ゴセにより1930年代から生産者元詰めを始め、現在ではその孫であるミッシェルとクリスチャン・ゴセが中心となってシャンパーニュ造りをおこなっています。リュットレゾネを採用しテロワールを反映したブドウ造り、醸造を貫いています。

今回は来日したクリスチャン・ゴセ氏(以下CG)にゴセ・ブラバンの魅力について伺いました。ゴセ氏はとてもユーモアセンスに溢れ、時折日本語が混じるなど数度の来日経験が垣間見ることができました。筆者はクリスチャン・ゴセ氏にお会いするのはこれで2度目。今回は、新キュヴェにかける思いなどを伺うことができました。

お久しぶりです。お会いするのは2008年初頭以来ですね。本日は前回詳しく伺えなかった事や新キュヴェについてお話を伺いたいと思います。まずは簡単にゴセ・ブラバンの特徴を教えてください。

CG: やはりピノ・ノワールでしょう! ゴセ・ブラバンのシャンパーニュをいくつかのキーワードで表現するなら次の5つに表現することができます。それはピノ・ノワール、アイ村、力強さ、ボリューム感、そしてフィネスです。その他、特徴的なものとしては香りがあります。アニス、そして洋ナシ、チョークの香りなどを持っています。

なるほど非常に端的で分かりやすい表現ですね。手元の資料で拝見するとゴセ・ブラバンの所有している畑はディジー、アイ村やその他の周辺に小さく点在していますが、これには何か理由があるのでしょうか。収穫場所が点々としていて収穫しづらいように思うのですが。

CG: そうですね、アイ村はブドウ産地としては古い部類に入ります。村では350haの畑があるのですが、そのうち180haの畑を大手のネゴシアンが所有しています。その残りの畑を世代交代の度に分割して現在のような小さな区画に分かれてしまっているのです。シャンパーニュ全体の話をすると。1パーセルは12haくらいなので、そこまで細分化されているということです。

先日アイ村を訪問したのですが、いたるところに村をPRする旗が掲げてあり、他の村に比べるとシャンパーニュに対して村をあげて力を入れているように感じましたが、何か特別な村なのでしょうか。

CG: ディジー村からアイ村に入ってくると、通りにたくさんの旗があります。これはアイ村と友好関係を結んでいる世界各国の友好都市の旗を掲げています。アイはシャンパーニュ地方の中でも世界的にも有名な村ですので、世界各国で友好都市になっているところはたくさんあるのです。日本に関しては姉妹都市になっている街はまだありませんが(笑)

さて、今回の本題に入りますが、新キュヴェであるブラン・ド・ノワールをリリースしようとしたきっかけはなんでしょうか? アイ村といえばピノ・ノワールというイメージがあり、既にあってもおかしくは無いと思っているのですが。

CG: シャンパーニュというのはアッサンブラージュをするものという概念を持っており、複数の品種をブレンドするという考えがあったのです。私達の村も一般的にはピノ・ノワールの産地で有名ですが、シャルドネももちろん作っています。それらをアッサンブラージュするという思い入れがありました。

しかし、よくよく考えた時にゴセ・ブラバン、そしてアイのテロワールってなんだろうと。それはやはりピノ・ノワールではないだろうかと。ではピノ・ノワールを使ってどう表現するのか、ゴセ・ブラバンの特徴を出していくのにどうすればよいかと考えた時に、難しく考えずにシンプルで良いのではないか。つまりモノクリュ、モノセパージュでいいのではないかと…そこにアイ村のブドウというだけでゴセ・ブラバンの特長を出せるのではないかと思い至ったのです。

それだけではありません。もう一つの理由は物理的条件です。今までは7.3haと畑の規模が小さく新しいキュヴェを造ることが出来なかったこともあります。しかし2002年に今まで生産農家をやっていた人が引退しその畑を引き継いだ結果、作付面積が増えて9.4haとなり新しいキュヴェをリリースできるようになりました。現在リリースされているブラン・ド・ノワールは2004年のブドウを100%使用しています。

今後もブラン・ド・ノワールを造っていくと思いますが、今回リリースされたキュヴェのようにブラン・ド・ノワールに関しては単一ヴィンテージで造られるのでしょうか?

CG: 今の段階ではわかりません。今後はブレンドして作っていくかもしれません。そのために現在リリースされているブラン・ド・ノワールにはヴィンテージの表記をしていません。2004年の次のヴィンテージは2006年を仕込んでいますが、こちらは単一ヴィンテージということは決定しています。その後は今のところわかりません。

ではこのブラン・ド・ノワールをどういったシーン、どういった食材と合わせるのがベストと考えていますか

CG: ブラン・ド・ノワールは力強い味わいをもっていて、しかもピュアな感じがあり特徴としては2つの相反する個性が混在しています。アイのテロワールを表現したかったのでドサージュも4g/Lです。料理とあわせるのなら肉料理でも比較的個性の強いもの、例えば鴨肉に香辛料を利かせたものや、子牛の内臓やリードヴォーなんかも良いと思います。

飲んでいただきたいシーンでいえば、先ほど述べたような特徴を持っていますので、大勢の仲間と外でワイワイと乾杯! という飲み方ではなく、愛好家の方たちと室内でゆっくりと楽しんでいただければと思います。シャンパーニュの温度もあまり冷しすぎず、10度〜12度と少し高めの温度で大きなグラスを使って飲んでいただきたい。

ところで先ほど話の中で出てきたアイ産のシャルドネについて伺いたいのですが、アイのシャルドネはあまり聞かないですが、どのような味わいでしょうか。

CG: ピノ・ノワールのようなシャルドネです(笑)。アイは非常にテロワールが強い土地なので、ピノ・ムニエもヴァレ・ド・ラ・マルヌで作られるピノ・ムニエとは異なりますし、もちろんシャルドネもコート・ド・ブランで作られるシャルドネと較べて大きく異なります。アイ村はピノ・ノワールに関してはフィネスや力強さが出ますが、多くの畑が南から南東向きで、シャルドネの栽培に適した東向きの畑があまりありません。シャルドネにしては土地が重すぎる傾向にあります。例えばブラインドテイスティングでシャルドネとピノ・ノワールを比べると時々分からないことがありますよ。

いつも感じているのですがシャンパーニュ地方はあまり観光ガイドなどにお店が載っていません。sHwAlistaではシャンパーニュ地方に訪問した時に立ち寄れるお店の情報があれば読者の方にも役立つと思うのですが、アイ村に来た時に食事やシャンパーニュを楽しめるお勧めのお店があれば教えていだけますか。

CG: 他の村を回られたのであれば分かると思いますが、アイ村は人口が約4万人ですので、他の村に比べては比較的大きい村です、その為食事をする場所もいくつかあります。ガストロミックなお店、ビュー・ピュイなどはアイ村産のシャンパーニュも充実しています。ラ・プティ・シュミエールは街中にある家庭的なフレンチを出すお店です。

エペルネまで行けばホテル併設のレストランラ・ヴェルソーが中心地にありますし、エペルネから少し離れて南にはこちらもホテル併設でミシュランの星付レストラン、ラ・ブリケットリーなどもあります。アイ村といえどもレストランは少ないので、エペルネまで出るのがベストでしょう。

最後に日本のシャンパーニュ愛好家に一言お願いします

CG: 日本は凄くシャンパーニュを愛している方が多く、そして興味深く飲んでもらっていると感じています。そして、様々で多種多様なスタイルのシャンパーニュがある中で、それぞれにあったスタイルを楽しんでいる人も多い。もちろん日本の市場には大手のメゾンがたくさんありますが、自分達のようなRMも非常に愛してもらっています。日本の方は例えば日本料理の多様性のように、物事の複雑さや多様性に興味をもっているのではないでしょうか。それは私たちにとってとても嬉しいことです。

クリスチャン・ゴセ氏 おすすめのお店

Les Berceaux
住所:13,rue des Berceaux 51200 Epernay France
番号:33(0)3 26 55 28 84
URL:http://www.lesberceaux.com/restaurant.htm

La Briqueterie
住所:4,route de sezanne 51530 Vinay-Epernay
番号:33(0)3 26 59 99 99
URL:http://www.labriqueterie.fr/

Lineup

Noir d'Ay Grand Cru

ノワール・ダイ グラン・クリュ

ピノ・ノワール100%で造られた新リリースのキュヴェ。アイ村のアニエ、コート・ファン、クロワ・クルセルの各区画をアッサンブラージュ。バラ色を帯びた金色。プルーンやチェリーといったフレッシュなフルーツの香りの中にブリオッシュやシャンピニオン、そしてミネラルが感じられます。豊かなボディ、凛とした酸、長い余韻のバランスが保たれています。

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