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sH レポート
業界向けの試飲会やイヴェントの模様、インポーターやメゾンの話題などを、シュワリスタ視点でレポートします
Vol.31
14.03.18 up

G.H.マム新ライン登場
最高醸造責任者
ディディエ・ マリオッティ氏 インタビュー

text:岩瀬大二(sH編集長)
photo:Sh編集部

sH エクスクルーシヴ インタビュー

【G.H.マム概要】
G.H.マムから新ライン『エキスパート・レンジ』が登場。すでに日本でもリリースされ、SHでも紹介している、ブラン・ド・ブランに加えて、日本初登場となるブラン・ド・ノワール、ブリュット セレクションがその構成アイテム。いずれも最高醸造責任者ディディエ・マリオッティ氏の哲学、表現、なによりも楽しく飲んでいただくための想いが込められたシャンパーニュたち。つまりエキスパート・レンジは「マムのメゾンの哲学」の表現。メゾンの代表作であり、常にメゾンの哲学を表現し続けてきたコルドンルージュと同じ「文脈」にある。その想いについて、G.H.マムの最高醸造責任者ディディエ・マリオッティ氏(以下DM)に伺いました。

今回、シュワリスタ・ラウンジとしては通算4回目となるインタビューになります。毎回、わくわくするニュースと併せてのインタビューですが、今回はいよいよ日本でお披露目となるブラン・ド・ノワールとブリュット セレクションについてお伺いします。ブラン・ド・ノワールは、フランス以外では日本が初めての展開になると聞いています。

DM: はい。
ブリュット セレクションとブラン・ド・ノワールは2011年にフランスで発売されました。ブリュット セレクションは昨年冬から香港での展開を始めましたし、今後も輸出を予定しています。しかし、ブラン・ド・ノワールはフランス以外では今のところは、日本だけの展開を予定しています。生産量が少ないということもあるのですが、ワインの知識、ワインの素晴らしいカルチャーが無い所での展開は難しいシャンパーニュであることも日本を選んだ理由です。

3つ揃って楽しめるのはフランスと日本だけ、ということは本当にうれしいお話です。では、それぞれ個別にお話を伺います。一昨日のお披露目ディナーで、ブリュット セレクションは「アッサンブラージュの哲学の表現」、ブラン・ド・ノワールは「葡萄そのものの魂の表現」とおっしゃっていました。

DM: そのとおりです。まず、ブリュット セレクションの特徴は、5つのグラン・クリュ、つまり、アヴィーズ、クラマン、アイ、ブジー、ヴェルズネイのアッサンブラージュ。到達点としては、複雑でありながらエレガントであること。
ここに注力しました。それはアペリティフにふさわしいシャンパーニュでありながら、
料理にもしっかりあうシャンパーニュであることです。
ブラン・ド・ノワールについてはピノ・ノワールの可能性を十分に引き出すことが挑戦の大きなテーマでした。そこで用いたのはブルゴーニュのメソッドです。複雑さ、力強さを引き出しながら、トゥマッチ、行き過ぎた形にはしたくなかった。フルーツがありすぎる、存在しすぎることは避けたかった。抑制の効いた形にしたかったのです。
テイスティングとは何かを知る人が、その複雑さ、深さを感じていただきながらも、一般には飲みやすく楽しんでいただけるようなものを目指しました。

かなり相反する要素。
それをさらりと言ってのけられているんですが…醸造家としては簡単なことではないはず。。

DM: でも、そんなに難しいとは自分では思いません。
自分が欲している物は分かっていましたし、目的はクリアでしたから。

なるほど。ブラン・ド・ノワールについてもう少しお伺いします。ブドウに関しては2002年と聞いています。
ミレジメ(ヴィンテージ)表記をしなかった理由をお聞かせください。

DM: このアイテムの基本アイデア、考え方として、収穫年の違いを表現することがコンセプトではありませんでした。 そこで、一つの選択として表記は行いませんでした。
また、現状として、一般に楽しまれる方が、ミレジメによる違いを理解したり、楽しんだりしているのか?という疑問があります。そこにこだわる必要はあまりないのではないか。それよりも、このアイテムの場合は、「タイプ性」というのが重要であって、このワインの性質を語る上で、ミレジメという要素によって、邪魔をされたくはないという想いはありました。

今後も表記はせずとも単一年の葡萄を使っていくという考え方なんでしょうか?

DM: 基本は「はい」です。
でも、そういったところに、柔軟性をもたせることができるのも表記をしなかった理由の一つです。

どのようにこのラインが育っていくのか?ご自身でも楽しみですね。ただとても大変なことではないかと思いますが。

DM: 大丈夫ですよ、
「日々の苦労はその日だけ」がモットーなので(笑)。あまり心配していません。次の収穫段階になってから大変さを考えます(笑)

(笑)それではここからシュワリスタ・ラウンジらしい質問を。この2つのアイテム。
ディディエさんご本人はどういったオケージョンで楽しみたいですか?具体的なシーンを思い浮かべながら…。

DM: ブリュット セレクションを飲める時間帯はたくさんあります。
ワインとして多面的、ポリヴァレントな存在です。いろいろなシーンで楽しんでいただけるでしょう。
お祝い、ハレの場に楽しんでいただくのもいいですね。夜の幕開けにもふさわしいでしょう。

ブリュット セレクションには圧倒的なパワーを感じました。
日本人的なシャンパーニュとの接し方でしたら、
もっと遅い時間というタイミングでも良さそうです。

DM: それもいいですね!食事の後、さらにパーティを続けるためにみんなと楽しみをわかちあうというシーンも面白い。そうそう、夜疲れて来た時にエネルギーを再チャージするために飲んでいただいてもいいと思いますよ。実は昨夜、素敵なレストランでディナーがありました。ただその最後、長旅ということもあってちょっと疲れていたんです。そこでシェフがチーズとソーセージを出して、ブリュット セレクションを開けた。すると不思議なことにエネルギーが再チャージ!そこからまた何時間か元気に夜を過ごせました。ほら今朝も元気でしょ!(笑:この日のインタビューは大雪の午前中)

実に贅沢でエレガントすぎる某雄牛のエナジードリンクだ(笑)

DM: それはいい定義ですね。
マーケティング部門にささやいてみますよ(笑)

それではブラン・ド・ノワールを

DM: ブラン・ド・ノワールは、もう少し特別感のあるシーンを想像します。記念のお食事、それから…暖炉の前でくつろいで親しい友人と、人生についてあれこれ議論する場面なんてどうでしょう。
いわば真面目、シリアスなシーンにもいい。真剣な議論の場面でシャンパーニュ、というのもなかなか面白いでしょう?
ワイン自体時間をかけて楽しんでいただきたいこともありますので。

実に好対照な存在感ですね。
さて、これで日本ではエキスパート・レンジのアイテムが、ブラン・ド・ブランと併せて3つ揃いました。
最後にシュワリスタたちにメッセージをお願いします。

DM: スタイルとか様式にとらわれず、型にはめこまないで、ポジティヴに楽しんでいただきたいんです。もちろん私自身も、幸せをみなさんに贈る仕事をしているのですからポジティヴにこの仕事を続けます。ぜひ楽しんでください。

Line Up

MUMM Brut Selection -Grand Cru-
マム ブリュット セレクション -グラン クリュ-
気高き至高のエナジードリンク

G.H.マムが約200年にわたり所有する、アヴィーズ、クラマン、アイ、ブジー、ヴェルズネイという5つのグラン・クリュから収穫された葡萄のみをアッサンブラージュ。4年以上熟成したリザーブ・ワインとのハーモニーは、深くなることは当然としても、そこに底抜けに明るい笑顔もある。マリオッティ氏の真骨頂ともいえる「飲み続けられるという喜び」がプレスティージュな世界の中にしっかり煌めく。フレッシュなドライフルーツ、爽やかなモカやプラリネ…相反する魅力がむんむんとする色気を伴ってボリュームたっぷりに繰り出されるトップノートから、あっという間に気品を伴う太くて静かな余韻へ。夜が更けても元気になれる不思議な飲み口。色気と快活の同居。

MUMM Blanc de Noirs -MUMM de Verzenay-
マム ブラン・ド・ノワール -マム ド ヴェルズネイ-
静寂の中のスペクタクル劇

1840年、G.H.マムが最初に取得したヴェルズネイのピノ・ノワールのみで造られたシャンパーニュ。コンセプト段階で「この葡萄100%で造ることには醸造チームの中でも賛否両論あった」というほど個性が強いピノ・ノワールを「辛抱が必要だった」という過程を経て見事に仕上げた。現行の葡萄は2002年。熟成は6年、低ドザージュ。冷涼さとふくよかさを併せ持つ、豊かさ。強烈だという葡萄の個性は見事に溶け込み、老獪なチャーミングさが出現。いきなり可憐に花開くピノ・ノワールではなく、じっくりじっくりしみだしてくる力強さ。。美しいハチミツと貪欲なヌガー、コーヒー。静かな世界ながら飲みごたえは十分。じわりじわりとその重みという幸せが、胃袋でまで感じられる。分厚くて重厚な古典本を読みながらアンヴィエント、たとえばシガーロスを聞く喜び。

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